肝炎と漢方薬
肝臓に炎症がおこり、肝細胞が正常に機能しなくなった状態を肝炎といいます。
肝炎が悪化すると慢性肝炎、肝硬変、肝がんに進行し、放置すると危険な状態になることがあります。
肝臓の働きは?
肝臓は右の肋骨に守られるように存在し、人の体で最も大きい臓器で、体重の約50分の1を占めています。
肝臓の働きは主に3つ。
- タンパクの合成、栄養の貯蔵
食べ物からとった糖・タンパク質・脂肪を体内で使える形に変えて貯蔵し、必要なときにエネルギーのもととして供給します。 - 有害物質の解毒・分解
アルコールや薬、老廃物などの有害な物質を分解し、体に影響をおよぼさないように無毒化します。 - 胆汁の合成・分泌
肝臓でつくられた老廃物を流す「胆汁」を生成・分泌します。胆汁は、脂肪の消化吸収を助ける消化液でもあります。
働き者でありながら“沈黙の臓器”といわれる肝臓。
その不調はすぐには表面化しないので病院の検査で指摘されることが多く、知らず知らずのうちに進行してしまうケースも多くあります。
肝炎の原因と種類は?
さまざまな原因により肝細胞に対する一種の免疫反応がおこり、その結果、肝細胞が障害を受けて死んでしまうとき、これを肝炎といいます。
また、アルコールや薬品、毒性の強い工業薬剤により、直接細胞が障害を受けた場合も肝炎と呼ばれています。
ウィルス性肝炎
日本ではウィルス性肝炎が最も重要で、肝炎といえばウィルス性肝炎をさすことも多くあります。
成人の場合、肝炎ウィルスが体内に入り、肝臓で増殖すると、これに対いて免疫機構が働き、リンパ球が感染した肝細胞を攻撃して破壊し、これを取り除こうとします。
この結果、肝細胞が多量に破壊され、肝臓の働きが低下します。
アルコール性肝炎
長期、過量のアルコールを飲み続けることで起こるアルコール性肝炎。
ヨーロッパと比較すると日本での発生率は低いようですが、年々増加傾向です。
アルコールは体内で有害物質であるアセトアルデヒドに、そして肝臓がそのアセトアルデヒドを無害な水と二酸化炭素に分解します。
多量の飲酒により分解しきれなくなったアセトアルデヒドが肝臓を攻撃することで肝炎を発症します。
アルコール分解量は人によって異なるため、服用量が少なく、短期でも発症するケースもあります。
女性は男性に比べ、アルコールの代謝が遅く女性ホルモンの影響を受けるため比較的少量のアルコールで発症しやすくなります。
また、偏った食生活による栄養不足は肝の代謝能を低下させるため、発症リスクをあげます。
薬剤性肝炎
薬物性肝炎には2つのタイプ「中毒性」と「特異体質性」があります。
中毒性ではアルコール肝炎同様薬物そのもの、もしくは代謝産物を十分に分解できず、肝臓が傷害されることです。
特異体質性はアレルギー性肝炎ともいわれ、薬剤の投与量に関係なく起こり、繰り返して使用を続けるとショックを起こし重症化することもあります。
薬剤の使用から発症までの期間はさまざまで、すぐ発症する例もありますが、2年以上経過して発症することもあります。
自己免疫性肝炎
自己免疫性肝炎は何らかの原因で、有害物質を排除するための免疫機能が自分自身の肝臓を攻撃することでおこります。
明確な原因は不明で、ウィルスや妊娠出産、薬物服用が関係すると考えられています。
他の自己免疫疾患と同様、中年以降の女性に発症率が高くなります。
肝炎の症状は?
肝臓が“沈黙の臓器”といわれるのは、ある程度進行しないと患者が自覚するような症状がでないためです。
このため、病院で指摘されたときにはすでに病状がかなり悪化していることもあります。
肝炎の初期である急性肝炎のは以下のような症状が出ます。
- 発熱、喉の痛み、頭痛などの風邪のような症状
- 食欲不振
- 倦怠感(全身のだるさ)
- 吐き気
- 腹痛
- 発疹
- 皮膚や白目が黄色くなる
- 尿が茶色くなる
急性肝炎では時間の経過とともに多くの症例では細胞が回復してもとの機能が戻ります。
しかし、軽い炎症が6ヶ月以上持続すると慢性肝炎、さらに傷ついた肝臓の修復が追いつかなくなる肝硬変や肝がんへと進行していきます。
症状が軽いうちに炎症を鎮め、機能を回復させることが大切になります。
肝炎により注意が必要な症状
肝炎が悪化してくると肝臓以外にも悪影響を及ぼすことがありますので、注意が必要です。
- クモ状血管腫・手掌紅班
- 食道静脈瘤
- 脾腫
- 痔
自分でできる肝炎対策
まず、原因物質の排除が大切になります。
お酒や薬剤などが原因であればすぐ中止しましょう。
脂質や糖質のとりすぎは肝臓の代謝機能に負担となりますので注意が必要です。
例外的に、魚の脂をはじめとしたオメガ3系の油脂は肝臓の炎症を鎮めるので積極的にとりましょう。
栄養の偏りは肝の代謝能力を低下させ、肝炎を悪化させます。
ビタミンとミネラルをバランス良く摂取しましょう。
特に肝酵素の生成に必要なビタミンはB6です。
マグロ、サケ、カツオ、サバなど赤身の魚やレバーに多く含まれます。
女性は鉄分不足に注意が必要です。
代表格としてレバーは誰もが知るところですが、苦手な人は貝類や赤身の肉・魚を積極的にとるようにしましょう。
男性は亜鉛不足になりがちです。
亜鉛も牡蠣、レバー、牛肉に多く含まれます。
胃腸が弱いと十分にビタミンやミネラルの吸収が悪くなります。
冷たいものを避ける、よく噛む、酸味を加えて消化を助けるなどを心掛けましょう。
また、破壊された肝には細胞の修復の材料となるタンパク質、肉や魚、豆製品が必要です。
油分が多いと代謝の負担になりますので、さっぱりといただくように調理法を工夫しましょう。
漢方の肝炎治療
ウィルス性の肝炎では原因治療法であるウィルスへのアプローチと対症療法である肝炎症を抑える薬の二本立てで行います。
ウィルスには免疫力を高める人参剤や黄耆剤が使われます。
炎症を抑える漢方薬は”柴胡””茵蔯蒿”が用いられます。
重症の肝炎では肌や白目が黄色くなる”黄疸”が現れます。
漢方では黄疸は体に湿と熱が溜まった状態と考えますが、その湿熱を鎮めるには特に”茵蔯蒿”が用いられます。
肝の炎症により血液の流れも滞ります。
その時は血流を改善する”桃仁””牡丹皮””田七人参”が効果をあげます。
肝炎のよくある質問
治療にはどのくらいの期間が必要ですか?
もちろん、漢方薬だけではなく生活習慣の見直しも大切になりますが、多くの方が3か月ほどの服用で数値に変化が現れます。
ただ、検査値が下がってすぐに服薬を中止してしまうとぶり返すことが多いので調子を見ながら減量、中止という流れになります。
肝炎であった期間が長ければ治療にも長く時間がかかりますので、早期の治療をおすすめします。
お一人では解決が難しいと思う方、ご不明な点がある方はぜひご相談ください!
(効能効果には個人差がございます。当内容は同等の効果を保証するものではございません。ご了承ください。)