進行性指掌角皮症(主婦湿疹)と漢方

写真ACの紺色らいおんさんの作品

「痒みがひどくて辛い」
「手袋をして家事をしているのに治らない・・・」
「爪がボコボコ・・・おしゃれも楽しめない」
「人の目につくので恥ずかしい」
「一度治っても再発してしまう」

主婦や美容師など、水仕事を多く行う方に多い手湿疹を進行性手掌角皮症、広くは主婦湿疹と呼びます。
水疱や赤みなどの皮膚の見た目だけではなく、痛みや痒みに悩む人も少なくありません。

目次

進行性手掌角皮症(主婦湿疹)とはどんな病気?

進行性手掌角皮症は主婦湿疹とも呼ばれ、手に触れる物質の刺激によって生じる湿疹や炎症の総称です。
症状は軽い手荒れから始まり、進行するとかゆみや痛みなどに悩むことも多くあります。

化学物質を含む洗剤や水を多く使用する美容師や調理師、炊事や洗濯で水仕事が多い主婦などに多いため「主婦湿疹」と呼ばれます。
乾燥肌やアレルギー体質、アトピーなど皮膚のバリア機能が崩れやすい方に起きやすい傾向にあります。

進行性手掌角皮症は40代前後の女性を中心に大人に多い疾患でしたが、最近では感染予防のために頻繁に手を洗ったり、アルコール等消毒をする機会が多くなったため、子どもの患者も増加しています。

進行性手掌角皮症は皮膚の赤みやかゆみ、小さなブツブツなどの症状が混じり合って発症します。
カサカサ乾燥するタイプとジュクジュク水疱ができるタイプがあります。

多くは利き手の親指、人差し指、中指の指先から発症します。
その後皮膚が乾燥してかがれ落ち、さらに硬くなってひび割れ、指紋がなくなるなどの症状が見られます。
ついで他の指や手のひら全体に広がり、次第に手の甲にまで湿疹が併発する場合があります。

再発を繰り返して長引いてしまう場合や、さらにひどくなると膿み、全身に症状が広がることもあるため注意が必要です。

進行性手掌角皮症(主婦湿疹)の原因は?

手のひらには毛が生えていません。
これは、毛と一緒にある皮脂腺も存在しないため、通常皮膚を保護する役割を持つ皮膚膜も手のひらにはないということです。
皮膚膜がないため、代わりに皮膚表面の角質層が厚くなっていることで手を保護しています。
この角質層は度重なる水仕事や摩擦などの刺激によってバリア機能が低下します。
その結果、カサカサして痒みを生じ、ひどくなると炎症やひび割れが起こりやすくなります。
これが進行性手掌角皮症の原因です。

進行性手掌角皮症のような洗剤や水、摩擦などによって皮膚バリアが破壊されて起こる炎症を“刺激性接触皮膚炎”といいます。
刺激性接触皮膚炎は手に現れる湿疹のおよそ7割を占めます。
アレルギーとは関係なく、誰でも発症する可能性があります。

自分でできる進行性手掌角皮症(主婦湿疹)対策

まず、大切なことは湿疹の原因となる刺激物質があればできるだけ触らないようにすることです。

しかし、主婦湿疹と呼ばれるだけあり、炊事や洗濯などでの水や洗剤が刺激となっている場合避けて通れるばかりではありません。
そのためなるべく手の負担を減らして改善するためのケアを日々行うことは大切です。

まず、カサカサがひどい場合は保湿が大切となります。
極度の乾燥は皮膚のバリア機能が低下しますので、こまめにしっかり保湿剤を塗りましょう。

水仕事をする際は手袋をすることや、洗剤を低刺激性のものに変更することもおすすめです。
ゴム手袋はアレルギーの原因となることがあるので、ビニール製やプラスチック製の手袋を選ぶ、木綿の手袋などを着用してその上からゴム手袋を着用するなどの工夫をしましょう。
シャンプーやリンスなどを変えることによって症状が改善することもあるようです。

頻繁に手を洗うことで症状が悪化することもありますので、手の洗いすぎに注意しましょう。
手を洗ったあとには、皮膚にうるおいを与える保湿剤をきちんと使用しましょう。

改善が見られても油断しないようにしましょう。
特に普段から水を扱う仕事をしている方は、軽度の症状であっても慢性化して徐々に悪化することがあります。
日常的なケアを意識的に習慣化することが大切です。

痒みがひどいケースでは白砂糖を控え、緑黄色野菜をとるようにしましょう。
冷たい飲み物、食べ物を避けて胃腸を冷やさないようにしましょう。

漢方の進行性手掌角皮症(主婦湿疹)治療

皮膚のカサカサした乾燥状態を漢方の考えでは血液が不足して皮膚に潤いを十分に与えることができていない“血虚“状態と考えます。
手先足先に冷えが見られるタイプでは血液の質を改善する“当帰”、体のすみずみまで薬の効果を届ける“木通”が入った漢方薬が効果的です。

また、40~50代の女性はホルモンバランスが乱れが皮膚湿疹の間接的な原因になっていることがあります。
この場合前述と同じように血を補いホルモンバランスを整える”温経湯””加味逍遙散”などが効果的です。

進行性手掌角皮症(主婦湿疹)と間違えやすい症状

手のひらに起きる湿疹は進行性手掌角皮症以外にもあり、西洋医学ではほとんどがステロイドで対処することが多いようです。
ステロイド治療は切れ味がよく、今苦しんでいる症状がすぐに治まるという点ではとても効果的ですが、根本的な治療ではないため症状が繰り替えしてしまうことがあります。
漢方治療ではそれぞれの原因に合わせて薬を選ぶ必要がありますので症状が似ていてもきちんと区別をつけることが治療には大切です。

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

掌蹠膿疱症は手のひらや足のうらに水疱や膿疱が起きる病気ですが、人によって臑やひじ、あたまなどに症状が起きることがあります。
爪が変形したり、骨や関節に痛みがでることもあります。

手や足に出る皮膚症状はまず小さな水ぶくれから始まります。
出始めはかゆみが伴うことがあり、しばらくすると水ぶくれが乾いて茶色いかさぶたとなり剥がれ落ちます。
周りの皮膚も炎症で赤くなり、表面の皮膚がかわいてカサカサになります。
角層が積み重なって厚くなると手を使うたび、歩くたびに痛みが走ることもあります。

男女比はおよそ1:2で、30代から50代に好発します。

膿疱はつぎつぎと出てくる場合と、良くなったり悪くなったり周期的にくりかえすことがあります。
掌蹠膿疱症は症状が手のひらや足のうらに限局する傾向があり、進行性手掌角皮症は利き手の特に親指や人差し指にできやすいという特徴があります。

掌蹠膿疱症について詳しくはこちらをごらんください

尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)

赤みのある盛り上がり(紅斑)から始まり、銀白色の厚い鱗屑(角質の粉)となりぽろぽろと剥がれ落ちます。
膿疱や水疱は生じず、かゆみを伴うこともあります。
ひじやひざ、髪の生え際や太ももなど刺激を受けやすい部位に発症します。

尋常性乾癬について詳しくはこちらをごらんください

白癬(カビ・水虫)

日本人の5人に1人が悩んでいるという水虫。
白癬菌というカビの一種で症状が現れます。
典型的には足の指の間など通気性が悪い箇所が白く皮膚がふやけたようになり、強いかゆみが表れます。
スリッパやバスマットなどを介して感染し、患部は通気性良く清潔に保つようにしましょう。
また、水虫と勘違いして市販の水虫薬を使うと汗疱は悪化することがありますので注意しましょう。

異汗性湿疹(汗疱)

強いかゆみを伴い手のひらや足の裏に膿疱が現れる異汗性湿疹、汗疱と呼ばれます。
春や夏に症状が悪化しやすく、自律神経の乱れなどで起きます。

異汗性湿疹 (汗疱)について詳しくはこちらをごらんください

進行性手掌角皮症(主婦湿疹)のよくある質問

kanpo-kuraishi.jp/kanpo/(新しいタブで開く)

主婦湿疹は肌が乾燥しやすい冬に症状が悪化しやすいのでしょうか?

空気が乾燥する冬は皮膚自体も乾燥するため、症状が悪化しやすい傾向になります。
しかし、継続的に皮膚に刺激を与えることで発症するため、年間を通して起こりえます。

ステロイド治療を卒業できますか?

ステロイドを長期使用すると皮膚の再生能力が低下します。
ステロイドからの卒業には通常の治療より長く時間がかかるかもしれませんがじっくり時間をかければ減量→中止となることは可能です。
あせらずに取り組んでいきましょう。

お一人では解決が難しいと思う方、ご不明な点がある方はぜひご相談ください!

(効能効果には個人差がございます。当内容は同等の効果を保証するものではございません。ご了承ください。)

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