掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)と漢方

写真ACの紺色らいおんさんの作品

「治療を続けていてもあまり治っていない」
「再発を繰り返して全然よくならない」
「人目を気にして手袋が手放せない」
「かゆみや痛みが辛い・・・」

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とは手のひらや足のうらを中心に水ぶくれ(水疱)やうみ(膿疱)が繰り返しでる病気です。
日本では13万6千人の患者がいると言われ、完治には数年の時間を要します。

目次

掌蹠膿疱症とはどんな病気?

掌蹠膿疱症は手のひらや足のうらに水疱や膿疱が起きる病気ですが、人によって臑やひじ、あたまなどに症状が起きることがあります。
爪が変形したり、骨や関節に痛みがでることもあります。

手や足に出る皮膚症状はまず小さな水ぶくれから始まります。
出始めはかゆみが伴うことがあり、しばらくすると水ぶくれが乾いて茶色いかさぶたとなり剥がれ落ちます。
周りの皮膚も炎症で赤くなり、表面の皮膚がかわいてカサカサになります。
角層が積み重なって厚くなると手を使うたび、歩くたびに痛みが走ることもあります。

男女比はおよそ1:2で、30代から50代に好発します。

膿疱はつぎつぎと出てくる場合と、良くなったり悪くなったり周期的にくりかえすことがあります。
周期的に症状が変化する場合は疲れたときや風邪をひいたとき悪くなるなど、自身できっかけを把握する必要があります。

めくれてくる角質をはがして皮膚表面を整えたくなりますが、刺激は症状を悪化させるため絶対やめましょう。
同様に、菌感染の原因になるため水疱や膿疱もつぶさないようにしましょう。

掌蹠膿疱症性骨関節炎(骨や関節の症状)

掌蹠膿疱症の合併症として骨と骨、骨と関節の付着部や骨そのものに炎症が起きて激しい痛みがでる「掌蹠膿疱症性骨関節炎」があります。
特徴的な発症部位は鎖骨と胸骨、胸骨と肋骨、上下の胸骨のつなぎ目、つまり胸から首の付け根にかけてです。
鋭い激しい痛みのため狭心症と間違われることもあります。
手足や腰、背骨に発生することもあり、患者さん本人は腰痛などと勘違いされていることもあります。
人によっては皮膚よりも関節の痛みから症状が始まります。

掌蹠膿疱症性骨関節炎は特に30代から40代の女性に多く現れます。

自分でできる掌蹠膿疱症対策

大切なことは掌蹠膿疱症を悪化させる要素を取り除くことです。

掌蹠膿疱症は扁桃腺炎や歯周炎、副鼻腔炎などの慢性炎症をきっかけに発症、悪化することがあります。
日ごろから手洗いうがい、丁寧な歯磨きを心掛け、風邪などにかかったときは無理をせずに早めに治すようにしましょう。

はっきりとした因果関係は示されていませんが、掌蹠膿疱症を発症する人の80%が喫煙者です。
禁煙によって掌蹠膿疱症が治るとは言い切れませんが、症状が軽減することが多いようです。

また、インプラント(歯科金属)の除去により症状が改善することがあり、これにより金属アレルギーが掌蹠膿疱症の発症が関与していると言われています。
まれに指輪などのアクセサリーや食品に含まれる微量金属での発症も報告されているので注意しましょう。

掌蹠膿疱症では乾燥により患部がひび割れることがありますので、こまめな保湿が必要になります。

白砂糖を多く含む食品は症状を悪化させるので控えましょう。
緑の葉物野菜は炎症を鎮める効果がありますので多くとるようにしましょう。

漢方の掌蹠膿疱症治療

漢方の考えでは掌蹠膿疱症を3つの原因に分けて考えます。

1つめの原因はホルモンバランスの乱れです。
このタイプはホルモン分泌をつかさどる“腎“を補う阿膠や地黄が入った漢方薬が有効です。

2つめは内臓に熱がたまった臓毒タイプで、デトックス効果がある連翹や荊芥などを含む漢方薬を用います。
このタイプの方は苦みのある青い葉物野菜を心がけてとってもらうと特に薬の効果が早く現れます。

最後は解毒機能の低下によって起きるタイプです。
解毒の臓器である”肝”の機能を整える柴胡を使います。

また、かゆみや痛み、関節炎を伴う場合は症状に合わせてまた異なる薬を組み合わせることがあります。

掌蹠膿疱症と間違えやすい症状

手のひらや足の裏に現れる湿疹が必ずしも掌蹠膿疱症ではありません。
いずれの疾患であっても漢方治療が得意な分野ですので、区別がつかなくても一度ご相談いただくことをおすすめします。

異汗性湿疹(汗疱)

強いかゆみを伴い手のひらや足の裏に膿疱が現れる異汗性湿疹、汗疱と呼ばれます。
春や夏に症状が悪化しやすく、自律神経の乱れなどで起きます。

異汗性湿疹について詳しくはこちらをごらんください

白癬(カビ・水虫)

日本人の5人に1人が悩んでいるという水虫。
白癬菌というカビの一種で症状が現れます。
典型的には足の指の間など通気性が悪い箇所が白く皮膚がふやけたようになり、強いかゆみが表れます。
スリッパやバスマットなどを介して感染し、患部は通気性良く清潔に保つようにしましょう。

尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)

赤みのある盛り上がり(紅斑)から始まり、銀白色の厚い鱗屑(角質の粉)となりぽろぽろと剥がれ落ちます。
膿疱や水疱は生じず、かゆみを伴うこともあります。
ひじやひざ、髪の生え際や太ももなど刺激を受けやすい部位に発症します。

尋常性乾癬について詳しくはこちらをごらんください

進行性手掌角皮症(主婦湿疹)

進行性手掌角皮症は主婦湿疹とも呼ばれ、手に触れる物質の刺激によって生じる湿疹や炎症の総称です。
症状は軽い手荒れから始まり、進行するとかゆみや痛みなどに悩むことも多くあります。

化学物質を含む洗剤や水を多く使用する美容師や調理師、炊事や洗濯で水仕事が多い主婦などに多いため「主婦湿疹」と呼ばれます。
乾燥肌やアレルギー体質、アトピーなど皮膚のバリア機能が崩れやすい方に起きやすい傾向にあります。

進行性手掌角皮症(主婦湿疹)について詳しくはこちらをごらんください

掌蹠膿疱症のよくある質問

掌蹠膿疱症は感染、もしくは遺伝しますか?

掌蹠膿疱症は菌感染が原因ではないため、感染することはありません。
また、家族で発症したという例も稀です。

掌蹠膿疱症自体は感染しませんが、長期ステロイドを使用するとその部位に白癬菌などの菌感染が二次的に起こることはあります。
菌感染が起きるとかゆみが強く出る傾向があります。

ステロイドから卒業できますか?

ステロイドから卒業するためには通常の治療より長く時間がかかるかもしれません。
喫煙や金属など、症状を悪化させるものを一つ一つ取り除いてじっくり漢方治療に取り組めば日常生活にほぼ支障がないほどに改善した方は多くいらっしゃいます。
一般的に長い時間患った疾患ほど治療にも時間がかかると言われています。
あせらずに取り組んでいきましょう。

お一人では解決が難しいと思われる方、ご不明な点がある方はぜひご相談ください!

(効能効果には個人差がございます。当内容は同等の効果を保証するものではございません。ご了承ください。)

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