副鼻腔炎(蓄膿症)と漢方
「ずっと鼻づまりがあり苦しい」
「喉に鼻水が落ちて気持ちが悪い」
「いやな匂いが鼻から離れない」
「匂いがわからない・・・」
「頭や顔の痛みがひどい」
人の頭骨には副鼻腔と呼ばれる鼻に通じる穴があいています。
副鼻腔炎(蓄膿症)とは何らかの原因でその副鼻腔の粘膜に炎症が起きる疾患です。
子供からお年寄りまで幅広い年代に発生し、適切な治療をしなければなかなか完治しません。
10人に1人は1年間のうちに副鼻腔炎を罹患するとも言われる、身近な疾患です。
副鼻腔炎の原因
副鼻腔は顔面の骨に開いている空洞で図の赤、青、緑、黄色印をつけられている箇所にあります。
副鼻腔を覆っている粘膜は喉や鼻と同じく粘液を分泌しています。
粘膜には腺毛と呼ばれる細い毛が生えていて、細菌やウィルスを粘液とともに排出する働きを持ちます。
そのため正常な副鼻腔内はほぼ無菌状態です。
粘膜が炎症を起こし腺毛の働きが悪くなったり、鼻と副鼻腔をつなぐ管が細くなると副鼻腔炎に分泌液がたまります。
これが副鼻腔炎です。
複数あるどれかの副鼻腔の粘膜が細菌やウィルスなどに感染されるものが急性副鼻腔炎といい、1~2週間程度で治まります。
風邪を契機に発症することが多く、最初にウィルス、数日後に細菌感染に移行し、加齢などで免疫力が落ちている例では真菌感染がみられることもあります。
また、風邪だけではなく虫歯菌を原因とした感染もあります。
急性副鼻腔炎から始まり、症状が繰り返すことを慢性副鼻腔炎(蓄膿症)といいます。
副鼻腔炎が長引き慢性化するのは炎症やアレルギー症状が継続しているわけではなく、粘膜が炎症むくみを繰り返すことで腺毛の働きが低下し、分泌液が十分排出できなくなるためです。また、先天的な鼻腔の構造や鼻茸(鼻ポリープ)により副鼻腔が閉塞しやすいということもあります。
子供では免疫力が弱いことやアデノイドにより急性から慢性に移行しやすい例があります。
また、副鼻腔炎は従来細菌感染が原因であるため、アレルギーとは明確に区別されていましたが、近年ではアレルギー的な過敏反応を示す好酸球性副鼻腔炎も増加しました。
副鼻腔は何のために?
副鼻腔炎をわずらう人にとってはやっかいな存在である副鼻腔。その存在理由は完全に解き明かされていませんが、重い頭部を二足歩行で支えるために副鼻腔による軽量化が必要なのだといわれています。
副鼻腔炎の症状
副鼻腔炎の一般的な症状は、鼻水、鼻づまり、鼻水が喉の奥に流れる後鼻漏、頭痛や顔面の痛みや嗅覚障害です。
同じく鼻水がでる花粉症と異なり、副鼻腔炎では色が濃く、粘りが強い鼻水が出ることが特徴です。
急性の副鼻腔炎では発熱や倦怠感もみられますが、これは上気道炎(風邪)を併発することも多いためどちらの症状か明確に区別はできません。
また細菌感染による副鼻腔炎では歯痛と口臭が生じることもあり、重症例では炎症が脳内や目に波及することがあります。
好酸球性副鼻腔炎では鼻茸ができやすく、手術をしてもすぐ再発を繰り返します。
また、一般的な慢性副鼻腔炎と比較し、喘息や嗅覚障害が起きやすいことが特徴です。
副鼻腔炎と西洋薬
急性副鼻腔炎では原因の菌が特定できれば抗菌剤が有効です。
粘膜の腫れの改善に血管収縮剤が用いられ、鼻づまりを和らげます。
ステロイドは副作用が少ない点鼻薬でよく用いられ、鼻粘膜の炎症を軽減します。
漢方の副鼻腔炎治療
漢方薬では副鼻腔炎を”湿熱”がたまった状態と考えます。
湿熱とは体を冷やす性質をもつ「水」が滞り、全く正反対の性質を持つ「熱」と結びついたものです。
湿熱のたまる場所には黄色い粘りの強い分泌液が多くなります。
目やに、鼻水、痰、耳だれ、おりもの・・・化膿性の炎症性疾患は副鼻腔だけではなく湿熱の仕業です。
また、湿熱が一カ所に充満すると”血”の流れが悪くなるため慢性では”血毒”も絡んできます。
急性の副鼻腔炎では鼻粘膜と深い関係を持つ”肺”の調子を整え、滞った余計な湿を取り除く”麻黄””桔梗”を用います。
慢性副鼻腔炎には炎症が強ければ“石膏”、鼻づまりが強ければ”辛夷””白芷”などを含む漢方薬を選びます。
好酸球性副鼻腔炎は少し特殊で、解毒機能を改善する漢方薬が功を奏すことがあります。
鼻茸には“ヨクイニン””桔梗”が用いられます。
自分でできる副鼻腔炎対策
湿熱がたまりやすい体質の方は全体的に飲食物を取り過ぎる傾向にありますので、適量を心がけましょう。
特に避けたい食べ物は味の濃い食べ物(甘いもの・辛いもの・塩辛いもの)、脂質の多いこってりしたものやお酒です。
解毒機能を機能を高める苦みの食べ物や青い野菜はおすすめです。
抑うつ感やイライラ、怒りなどのストレスは体の中に熱をため込みますので湿熱は悪化します。
また、ストレスにより免疫力が落ちると副鼻腔炎の起因となる感染症にかかりやすくなるため注意しましょう。
アレルギー性鼻炎を基礎疾患としてもっていると鼻粘膜の機能が落ちるので早めに治療を。
虫歯治療も同様です。
免疫力と高めるために適度な運動習慣も大切です。
副鼻腔炎と間違えやすい症状
副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎(花粉症)
鼻の症状が強い副鼻腔炎はよくアレルギー性鼻炎と間違われまが、熱が原因の副鼻腔炎と寒が原因のアレルギー性鼻炎では治療が大きく異なります。
副鼻腔炎では喉の奥におちる鼻水(後鼻漏)と、その鼻水が黄色く粘り強いことが特徴です。
それに対し、うすくさらさらの鼻水でくしゃみ、目の違和感などの症状があればアレルギー性鼻炎です。
花粉症についてはこちらをご覧ください
副鼻腔炎と咳(喘息)
喘息のご相談で、実は副鼻腔炎だったということもあります。
これは喉の奥に鼻水が落ちる後鼻漏の影響で鼻の症状より間接的に咳と痰の症状が強く出るためです。
また、好酸球性副鼻腔炎の方では喘息を合併することがあります。
副鼻腔炎のよくある質問
西洋薬と併用できますが?
西洋薬と漢方薬は飲み方に気をつければ併用は問題ありません。
服用される西洋薬を確認したうえで漢方薬をご用意、飲み方の説明をケースに合わせてさせていただきます。
ただ、急性副鼻腔炎は感染症を起因としますが、慢性副鼻腔炎では必ずしも菌の存在が悪さを続けている訳ではありませんので抗菌薬の使用は慎重であるべきと考えます。
また、ステロイド点鼻薬を長期間使用していると治療期間が長引く傾向があります。
慢性副鼻腔炎の漢方症例
70代女性・慢性副鼻腔炎。
症状は波があるが後鼻漏が気になり、鼻が詰まるという訴えがありました。
生まれつき鼻腔の形に閉塞があり副鼻腔炎になりやすいということでした。
粘膜の炎症を和らげ、排膿作用がある漢方薬をご用意しました。
お薬の効果をよくするために食養生(生活習慣の改善)もお伝えしました。
服用開始後約一ヶ月で後鼻漏が気にならなくなり、鼻づまりも改善してきた実感があったそうです。
念のためあと二ヶ月継続していただきました。
驚くほど副鼻腔炎の効果が早く出た症例です。
食生活の注意点などをきちんと守ってくれたことも効果がでやすい一因だったかと思います。
お一人では解決が難しいと思われる方、ご不明な点がある方はぜひご相談ください!
(効能効果には個人差がございます。当内容は同等の効果を保証するものではございません。あしからずご了承ください。)