汗疱(かんぽう)と漢方

写真ACの紺色らいおんさんの作品

「かゆみが苦痛」
「ずっと症状が繰り返して治らない」
「手袋をしないと家事ができなくてわずらわしい」
「寝ている間にかきむしってしまう」
「手の湿疹は人目につくので恥ずかしい・・・」

手のひらや足の裏に小さな水疱が現れる汗疱。
激しいかゆみを伴い、突然発症しては消失を繰り返します。

目次

汗疱(かんぽう)とはどんな病気?

手のひらや足の裏、手足の指の側面に痒みを伴う水泡(水ぶくれ)。
一見水虫のようにも見えますが、汗が原因で発症する”汗疱”かもしれません。

汗疱は春から秋にかけて発症しやすく、発汗と関係して起こります。
汗を大量にかいたとき、皮膚がふやけ、汗の出口がふさがれることがあります。
そして、外に出られなくなった汗が皮膚内でたまり水ぶくれができ、炎症がおこります。
水ぶくれは数日でやぶれて、皮膚が剥がれ落ちます(落屑)。
激しいかゆみが特徴で、足に発生した場合は痛みを伴うこともあります。

かゆみで皮膚をかきむしると皮膚が傷つき、炎症がさらに悪化します。
このかゆみと炎症が悪循環となり症状が繰り返すことが多くあります。

水虫のように菌による病気ではありませんので他者に感染させることはありませんが、手の湿疹は人の目につくため周囲からの印象が悪くなったり、自分自身も大きなストレスになることがあります。

汗疱(かんぽう)の原因は?

汗疱は汗が多く出ることによって起こります。
そのためよく多汗症を合併することがあります。

手や足の汗は自律神経の一種・交感神経が調整をしています。
ストレスなどで自律神経のバランスが崩れると手のひらなどに多くの汗をかき、それが汗疱の原因となります。

また、汗疱の原因に金属アレルギーも密接に関係しています。
体内の金属がイオン化し、汗に多く入り込むとアレルギーにより炎症がひどく表れ、湿疹ができやすくなります。

扁桃腺炎や歯周病、喫煙も発症、もしくは悪化要因としての指摘があります。

自分でできる汗疱(かんぽう)対策

まず、手などに汗をかいたらこまめに拭いて清潔に保つようにしましょう。
肌の保湿は炎症を抑えるために有効です。
刺激は症状悪化を招きますので低刺激の洗剤を選んだり、水仕事はゴム手袋をするようにしましょう。
手汗をかきやすい方は、どんなときに汗をかきやすいか日記をつけて悪化しやすい状態を知っておくことも大切です。

散歩などの運動で軽い汗をかくことで自律神経の働きを整え、手のひらの発汗を軽減できます。
ぬるめのお風呂に入って汗をかくことも有効です。

金属アレルギーが悪化の原因となっているケースではアクセサリーやインプラントなどの接触加えて、食品に含まれる金属成分を避ける必要もあります。

解毒機能を高める緑黄色野菜を積極的にとるようにしましょう。
刺激物や脂分、糖分は炎症を悪化させますので取り過ぎないようにしましょう。

漢方の汗疱治療

汗疱の治療は大きく分けて2つに分かれます。

1つめは手汗の原因となる交感神経(自律神経)を整えて手汗を抑える治療法です。
自律神経を整える漢方薬は多くありますが、特に手足の末端に作用するために“柴胡““芍薬“などが入ったものが多く使われます。

2つめは発散を助けて体全身の水分循環を改善する方法です。
多くは“桂枝““甘草”が含まれる薬剤を選択します。
このタイプの方は運動やお風呂などで軽い発汗も効果的です。

汗疱と間違えやすい症状

手のひらに起きる湿疹は汗疱以外にもあり、西洋医学ではほとんどがステロイドで対処することが多いようです。
ステロイド治療は切れ味がよく、今苦しんでいる症状がすぐに治まるという点ではとても効果的ですが、根本的な治療ではないため症状が繰り替えしてしまうことがあります。
漢方治療ではそれぞれの原因に合わせて薬を選ぶ必要がありますので症状が似ていてもきちんと区別をつけることが大切になります。

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

掌蹠膿疱症は手のひらや足のうらに水疱や膿疱が起きる病気ですが、人によって臑やひじ、あたまなどに症状が起きることがあります。
爪が変形したり、骨や関節に痛みがでることもあります。

手や足に出る皮膚症状はまず小さな水ぶくれから始まります。
出始めはかゆみが伴うことがあり、しばらくすると水ぶくれが乾いて茶色いかさぶたとなり剥がれ落ちます。
周りの皮膚も炎症で赤くなり、表面の皮膚がかわいてカサカサになります。
角層が積み重なって厚くなると手を使うたび、歩くたびに痛みが走ることもあります。

男女比はおよそ1:2で、30代から50代に好発します。

膿疱はつぎつぎと出てくる場合と、良くなったり悪くなったり周期的にくりかえすことがあります。
症状が手のひらや足のうらに限局する傾向がある、という点で汗疱との区別がつきにくい病気です。

掌蹠膿疱症について詳しくはこちらをごらんください

尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)

赤みのある盛り上がり(紅斑)から始まり、銀白色の厚い鱗屑(角質の粉)となりぽろぽろと剥がれ落ちます。
膿疱や水疱は生じず、かゆみを伴うこともあります。
ひじやひざ、髪の生え際や太ももなど刺激を受けやすい部位に発症します。

尋常性乾癬について詳しくはこちらをごらんください

白癬(カビ・水虫)

日本人の5人に1人が悩んでいるという水虫。
白癬菌というカビの一種で症状が現れます。
典型的には足の指の間など通気性が悪い箇所が白く皮膚がふやけたようになり、強いかゆみが表れます。
スリッパやバスマットなどを介して感染し、患部は通気性良く清潔に保つようにしましょう。
また、水虫と勘違いして市販の水虫薬を使うと汗疱は悪化することがありますので注意しましょう。

進行性手掌角皮症(主婦湿疹)

進行性手掌角皮症は主婦湿疹とも呼ばれ、手に触れる物質の刺激によって生じる湿疹や炎症の総称です。
症状は軽い手荒れから始まり、進行するとかゆみや痛みなどに悩むことも多くあります。

化学物質を含む洗剤や水を多く使用する美容師や調理師、炊事や洗濯で水仕事が多い主婦などに多いため「主婦湿疹」と呼ばれます。
乾燥肌やアレルギー体質、アトピーなど皮膚のバリア機能が崩れやすい方に起きやすい傾向にあります。

進行性手掌角皮症(主婦湿疹)について詳しくはこちらをごらんください

汗疱のよくある質問

汗疱は感染、もしくは遺伝しますか?

汗疱は菌感染が原因ではないため、感染することはありません。
また、家族で発症したという例も稀です。
どの疾患でもストレスは症状を悪化させますが、汗疱は特にストレスによる自律神経の働きに影響を受けますので、生活を見直すことは治療の第一歩です。

ステロイド治療を卒業できますか?

ステロイドを長期使用すると皮膚の再生能力が低下します。
ステロイドからの卒業には通常の治療より長く時間がかかるかもしれませんがじっくり時間をかければ減量→中止となることは可能です。
あせらずに取り組んでいきましょう。

お一人では解決が難しいと思われる方、ご不明な点がある方はぜひご相談ください!

(効能効果には個人差がございます。当内容は同等の効果を保証するものではございません。ご了承ください。)

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