起立性調整障害と漢方薬

「朝なかなか起きられなくて、学校に行けない・・・」
「動悸や息切れが多くて不安」
「立ち上がるとめまいがおきて怖い」
「どこの病院にかかればいいのかわからない」
「サボっている、やる気がないと思われてしまう・・・」
「病院の薬を飲んだけど、あまり改善が感じられない・・・」

小学校高学年から中学校の思春期の子供を中心に比較的若年層に多い起立性調整障害。
立ち上がるときにめまいや動悸、失神などがおきる自律神経の病気です。
不登校の子供の3分の2が悩まされているといわれ、学校へ行くことが困難、学力などに影響を及ぼします。
本人の意思でコントロールが難しいにも関わらず「やる気がない」「サボっている」など、世間の理解が得られず、本人の心を深く傷つけることもあります。

目次

起立性調整障害の原因

頭の先からつま先まで全身に張り巡らされる血管と、その中を流れて各所に必要なエネルギーを届ける血液。
この大切な血液循環を調整するものが自律神経です。

通常、人は立ち上がるときに自律神経の一つである交感神経が働き、重力で血液がたまった下半身の血管を収縮させ、心臓に送り戻します。
これがうまくいかないと心臓の血流量が減少し、血圧、脳血流が低下しめまいや動悸、失神などの症状が引き起こされ、起立性調整障害となります。

自律神経の調整がうまくいかない原因は身体的要素以外に、精神的、環境的要素も関わっています。

身体的な要因として第二次成長期の体の変化があげられます。
思春期には、他の体の部位同様、自律神経もまた大きな変化が必要となり、調整機能が不安定となり、発症リスクが高まります。

また、起立性調整障害に悩む方は血流量が少ない、ともいわれています。
成長期に必要となる栄養素が十分摂取できていないことが発症の起因となっていることも一因となります。

起立性調整障害は思春期の子どもが悩むだけでありませんが、成長期の過ごし方や栄養状態はその後の発症に関係があるようです。

精神的な要因として、ストレスをためやすい真面目で気を遣う性格の方が起立性調整障害になりやすいといわれています。

進路や学校生活、職場の人間関係などの環境要因もまたストレスとなり、発症を後押しするケースがあります。

また、遺伝性もあり、両親に同じような症状があることも多いようです。

起立性調整障害の症状

起立性調整障害はすべてを疾患として扱う必要はありませんが生活に支障をきたしている場合治療の対象となります。
「朝なかなか起きられない」「立ち上がったときにめまいや失神がおきる」「動悸や息切れがする」などが主な症状です。また、午前中に症状が強く午後には軽減することも特徴で、そのため不登校や仕事に通うことができないなど社会生活に支障をきたすことが多くあります。他にも顔面蒼白、食欲不振、頭痛や腹痛、倦怠感、乗り物酔いなどの症状がでることがあります。

起立直後性低血圧

起立直後の血圧低下の回復に時間がかかるタイプです。
朝起きられない、立ち上がるとくらっとくる起立性調整障害の代表的な症状です。

体位性頻脈症候群

血圧の回復には異常はありませんが、起立後心拍数が落ち着かず、動悸を感じるタイプです。

神経調節性失神

起立中に急激な血圧低下によって、意識消失などの発作が起きるタイプです。

遷延性起立性低血圧

起立直後は問題ありませんが、起立を続けることで徐々に血圧が低下してめまいや失神がおきるタイプです。

起立性調整障害の漢方治療

漢方では起立性調整障害をまず、気の巡りを整える、ストレスの緩和、血液の質の改善を3本柱として考えます。

血圧、脈拍の調整がうまくいかないケースでは、上昇に気を巡らせる“桂枝““甘草“が入った気逆(気の巡りが逆行している)薬が効果を発揮します。

真面目で周囲に気を遣う、ストレスが多いタイプに頭部から下半身まで滞った気を大きくかき混ぜる“蘇葉““厚朴”が入った香りのよい漢方薬を。

また、血液量の不足である血虚症状が見られるときは“地黄”などが入った漢方薬を選薬します。

自分でできる起立性調整障害対策

まず、転倒防止のためうつむきながらゆっくり立ち上がり、最後に頭を上げるようにしましょう。
長時間同じ姿勢で起立していると下半身に血液がたまりますので、どうしてもの時は足をうごかしたりクロスさせたりしましょう。

自律神経を中心とした体の成長に必要な栄養分をしっかりとるようにしましょう。
特に不足がちなタンパク質とミネラルは意識して、胃腸に問題なければ赤みのお魚やお肉を。
少量ずつ、多くの食材をとることが理想的です。

また、しそや三つ葉、にらなど香りの強い野菜は気の巡りを改善します。

激しい運動はさけ、ぬるめのお風呂にゆっくり入る、ストレッチでリラックスする時間をとることもおすすめです。

起立性調整障害と間違えやすい症状

鉄欠乏性貧血

めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ・・・起立性調整障害で見られる症状は鉄欠乏性貧血でもおきえます。
鉄欠乏貧血は血液の成分ヘモグロビンに必要な鉄が不足し、酸素の運搬が十分に行われない状態です。
激しい運動や生理のような出血、偏食や小食などが原因となります。
まぶたの裏が白い、爪が割れやすい、氷をかじりたくなるなど思い当たれば鉄欠乏の可能性は高いです。

病院の検査で診断がつく鉄欠乏性貧血ですが、検査に見られない潜在性鉄欠乏状態もあります。
心当たりがあればご相談ください。

心疾患

不整脈、弁膜症、心筋症もまた脳血流量の低下による失神のリスクがあります。家族の病歴や、日頃の心電図などの結果、運動中の血圧上昇不良などが特徴となります。

てんかん

脳の異常興奮により、けいれんや吐き気、頭痛、失神がおきるてんかん。意識を失う、全身に力が入らなくなるなど起立性調整障害と似た症状があり、若年層でも発症が多い疾患です。

副腎疾患

朝起きるのが辛い・・・という症状は副腎疾患でも起こりえます。医学的な病名としては起立性調整障害とは切り分けて考えるべきですが、自律神経の調整不全という意味では重なる部分も多く、漢方治療の得意な分野です。

甲状腺疾患

脈が速くなり、動悸がするなど、甲状腺疾患の症状もまた、起立性調整障害と重なる部分があります。治療の方針は変わりますが、こちらも同様に漢方薬の治療が効果的です。

起立性調整障害は根深く、治療も難しいですが、じっくり取り組んでいけば必ず改善します。
お一人では解決が難しいと思われる方、ご不明な点がある方はぜひご相談ください!

(効能効果には個人差がございます。当内容は同等の効果を保証するものではございません。あしからずご了承ください。)

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